
御嶽山を南~北まで周回し、下山後は釜沼温泉に宿泊する2泊3日の旅に行ってきました。信仰の色が強く、荒涼とした南御嶽、高山植物が豊かな北御嶽と異なる魅力のつまった登山コース。なによりも、ガスの多い初日は幽玄な雰囲気、よく晴れた翌日は御嶽の全貌が見え、その変化が心に残っています。
山小屋とは思えないおしゃれな五ノ池小屋とミネラルたっぷりの冷鉱泉が楽しめる釜沼温泉と宿泊先もよく、充実した旅となりました!! 本ブログは初日の記録です。
- 日:2025/8/16(土) -2025/8/18(月)
- 旅程
- 8/16:大阪 - 木曽福島 - 御岳ロープウェイ - 登山 - 五の池山荘
- 8/17:五の池山荘 - 登山 - 御岳ロープウェイ - 釜沼温泉 大喜泉
- 8/18:釜沼温泉 大喜泉 - 奈良井宿 - 大阪
- アクセス
- [電車] 大阪 - 木曽福島 約2時間45分 10,110円 新幹線・特急利用
- [バス] 木曽福島駅 - 御岳ロープウェイ 約1時間 1,500円
公共交通機関での東京から木曽福島までのアクセス
行き方はいろいろあると思いますが、なかなか悩ましいですね。おんたけロープウェイHPのアクセスマップが参考になりました。
・高速バス:新宿16:35 - 木曽福島20:50 5,000円 (おんたけ交通)。木曽福島に夜到着するため、前泊が必要に。
・新幹線+特急:新宿から始発で移動すれば、9:17に木曽福島に到着可能。約11,000円
目次
南御嶽 信仰の山
古くから山岳信仰の対象とされてきた御嶽山。江戸時代後期には黒沢口を拓いた覚明行者と王滝口を拓いた普寛行者によって、御嶽教が普及したそうです。「御嶽に生まれ御嶽にかえる」との考えから、御嶽山の麓や山中に先祖の霊を慰めるための霊神碑が数え切れないほど建立され、独特の光景を作り出しています。
あいにくの天気だった初日。荒涼とした山肌に並ぶ霊神碑や行者の像にガスがかかり、どこか別の世界に踏み入れてしまったような不思議な雰囲気が印象に残っています。
- コース:飯森高原駅 - 一の又小屋 - 女人堂 - 石室山荘 - 二ノ池山荘 - 二の池ヒュッテ - 白竜避難小屋 - 摩利支天乗越 - 飛騨頂上 - 五の池小屋
- 標準コースタイム:約4時間
- 難易度:低
- 登山道は整備されており、山小屋も多い。
- 賽の河原は霧が出やすく、迷いやすい。悪天候時は要注意。
- 3,000m級で上部は寒い。ダウンやフリースは必須。
- その他:長野県・岐阜県立自然公園条例で、通年でテント泊は禁止されています。宿泊する場合は山小屋を利用。
- おんたけロープウェイ:鹿ノ瀬駅 - 飯森高原駅 約15分 片道1,400円
噴火レベルの確認
令和7年5月20日/気象庁発表で、噴火警戒レベル1に引き下がりました。活火山のため、気象庁HPや王滝村HP等で入山規制情報をご確認ください。
写真

御嶽山には5つの登山口がありますが、メジャーなのは、木曽側:王滝口(田の原)、黒沢口(ロープウェイ)、飛騨側:小坂口(濁河温泉)の3つかと思います。その中でも、最も高い標高地点から最短ルートで登る田の原が人気。
今回はロープウェイを利用して高度を上げ、そこから五の池まで行って一泊。五の池から継子岳を周回し、もとの道を辿って剣ヶ峰まで行き、ロープウェイで下山。そして、釜沼温泉 大喜泉に宿泊する計画です。
木曽福島駅から、田の原行きとロープウェイ行きの夏・秋限定バスがおんたけ交通から出ています。(むかしは濁河温泉行きもあったよう。2025年現在は廃線に。)

中山道の宿場町の一つである福島宿のある木曽福島。宿場町といった雰囲気を残し、駅前には土産物屋や食事処、おんたけ交通バス券売り場がありました。JR待合室にはロッカーや自販機、トイレあり。少し歩くとコンビニも。
大阪から始発の電車に乗り、木曽福島に到着したのが8時半。ロープウェイ行きのバスが8時40分発とぎりぎり。
駅前のバス停には登山客が10名強ほどおり、同時に来た田の原行きとロープウェイ行きのバスに分かれて乗車。
百名山なので混雑すると思いきや想像以上に少なかったです。みなさん、車で登山口まで行くのかしら...。

黒沢口に入ると、御嶽教の霊神碑(れいじんひ。先祖の霊を慰め、死後の魂が御嶽山に還ることを願って建てられる石碑のこと)がたくさんあり、山岳信仰の雰囲気を早くも感じます。
道が悪いので、マイカーで行かれる方は運転に気をつけてください。

ロープウェイチケット売り場はきれいな建物。Information、チケット売り場、土産物屋、トイレがあります。
駐車場は1,000台?収容と広く、6~7割埋まっていました。そこまで混雑を感じません。三重や愛知、長野、岐阜などのナンバーが多いようでした。

ロッカーはありません。Informationに伝えると、500円で荷物を預かっていただけます。
わたしは着替えやiPadなど登山に不要な荷物を預けました。

5合目標高1,570mの鹿ノ瀬駅(かのせえき)から七合目2,150mの飯森高原駅まではロープウェイで約15分ほど。一気に高度を上げます。

ロープウェイを降りると空気はひんやり。じっとしていると寒さを感じるほどですが、これから登山なので半袖で出発。
飯森高原駅には展望台とレストラン、御嶽社などがあります。


行場山荘までは平らな道。ウッドチップが地面に撒かれていて、足にやさしいです。

5分ほどで、行場山荘に到着。トイレあり(有料)。茶屋になっており、名物の力餅をいただきました。

ぜんざいときなこがあり、それぞれ500円。つきたてのお餅でおいしかった!
うどんやおでん、ジュースなどもいただけます。


行場山荘からは、女人堂まではひたすら登り。
涼しいけれど、湿度が高くて汗が止まりません。。。



女人堂に到着。御嶽山の山小屋の中でももっとも歴史が古く明治初年から営業。かつては女性の登山は許されていなかったため、ここで男性の帰りを待ったそう。
うどんやラーメン、おしるこ、ドリンクなどがあり、休憩や軽食をとったり、2~3階では宿泊利用もできます(電話で事前予約要)。

女人堂にはたくさんの御嶽教の霊神碑があり、山岳信仰の雰囲気がぐっと出てきます。

ここから、三の池方面に進む道と頂上に向かう道に分かれます。
三の池方面は登山道が荒れており、雨天時には沢の増水や落石の危険があるそう。臨時的に通行止めになる場合もあり、木曽町のwebサイトに情報が出ます。
私はもちろん頂上方面へ。次のポイントの石室山荘まで1時間ほど。まだまだ高度を上げていきます。


この写真の右側に金剛童子(こんごうどうじ)という神様が祀られています。そして、その右横に「金剛童子の大岩」と呼ばれる黒い岩があり、この岩を「結界石」として、かつてはこの先を女人禁制の神域としていたようです。


「覚明霊神」と書かれた霊神碑がたくさんありますが、黒沢登山口を拓いた覚明行者を祀った霊神のこと。王滝口を拓いた普寛行者と覚明行者が御嶽山を開山しました。この開山に導いた覚明霊神、普寛霊神、その弟子の一心霊神、一山霊神が御嶽山の四大講祖と呼ばれているようです。

女人堂を超えると、白装束の御嶽教信者の方を見かけるようになってきました。


霊山であり、死後の安息の地として信じられてきた御嶽山。荒涼とした雰囲気がそんな信仰につながったのかもしれません。

「さーんげさんげ(懺悔懺悔)、ろっこんしょうじょう(六根清浄)」の掛け声で登っていた信者の方。六根清浄のあとには「山に登ります。安全に登らせてください。」といった節が続き、聴いていると安心感がありました。
さみしい雰囲気があるので、人の気配があるのが心強い。


岩の斜面にポツンとある石室山荘。よくこんなところに山荘を作ったものだなあと思います。
こちらの山荘も休憩や宿泊ができ、御来光がきれいに見えるそう。


そして、南御嶽でもっとも印象に残ったのがこの覚明堂。九合目にある覚明行者の霊場で、ニノ池で入定した覚明行者をこの赤岩に埋葬したとされています。

日帰りで剣ヶ峰を登る方も多いようですが、単調な登り下りになってしまって魅力が半減する気がします。

剣ヶ峰と二の池の分岐点。
この日は天気が悪いので、剣ヶ峰は翌日のお楽しみに。五の池山荘をそのまま目指しました。
二の池~五の池 ゆるやかな稜線と高山植物
初日のハイライトは、二の池から摩利支天乗越まで!急峻な稜線や岩と砂の荒涼とした雰囲気から、ゆるやかな稜線と高山植物の緑に景色が一変!ケルンと地蔵が点在する賽の河原や石の間に生える可憐なお花など見どころがたくさんあるうえに、人が少なく静かな山歩きが楽しめるのも魅力です。
写真

御嶽山には、5つの火口湖があり、標高の高い順に一ノ池から五ノ池の名前が付けられています。
ほとんど涸れている一ノ池の次に、日本最高所の池として知られていた「二ノ池」。2024年をもって完全に消失したと発表されました。
かつてはコバルトブルーの水をたたえていたそうですが、2014年の御嶽山噴火で大量の火山灰が雨や雪解け水によって流れ込み、まるで砂漠のように。

二ノ池山荘。噴火警戒レベルが引き下げられたため、2025年夏季は宿泊も可能。もちろん休憩もできます。
HPを見ると、2014年の噴火当時の記録を残されており、胸がつまりました。ご冥福をお祈りします。

そして、この日のハイライトは、二の池から摩利支天乗越までの道。
ちょうど雲が晴れ、たおやかな稜線に広がる緑とお花に心躍りました。


摩利支天と剣ヶ峰の間にある火口原が賽の河原。平坦な場所に無数のケルンがあり、独特な雰囲気です。
仏教では、早死にした子供達が善行を積むために石で塔を作る河原を「賽の河原」と言いますが、それを彷彿させます。
ちょうど晴れ間で美しい光景でしたが、霧が発生すれば迷いやすい場所。実際に遭難碑もありました。





そして、摩利支天乗越までやってきました。摩利支天山と五ノ池小屋方面の分岐点。ガスで周りがなにも見えなかったので、進む方向に注意しました。
ここからは尾根を下って、五の池山荘へ。

途中、雷鳥親子に出会いました。怖がらせないように、熊鈴の音を止めて慎重に歩きます。

石畳の斜面は比較的歩きやすいですが、ガスが濃くなってきたので、先を急ぎます。

五の池山荘が見えてホッ。山小屋は心の支えですね。
五の池小屋 ランプと薪ストーブのあるおしゃれな山小屋
初日は人気の五の池山荘に宿泊。今回いちばん歩きたい継子岳周回の拠点によいうえに、ランプと薪ストーブのあるおしゃれな山小屋!サングリアや海外ビールがあるうえに、手作りケーキや薪ストーブで焼いたピザやアップルパイをいただけます。贅沢な山小屋宿泊となりました!
- 五の池小屋
- 夕食のみ:13,000円、2食つき:15,000円(夏・秋営業の場合)
- 利用したプラン:2食つき
- 食事:夕食17時~、18時~ 朝食5時半~、6時15分~ (先着順と思われる)
- 消灯:20時半
- その他
- 公式HPにてWeb予約 (完全予約制)。宿泊日の30日前よりキャンセル料が発生。キャンセル料または宿泊代はWeb予約時のクレジットカードから自動請求される。
- 素泊まり、お弁当の対応はしていない。
- 風呂なし。トイレは外。
- FreeWifiなし。
写真

五の池山荘に到着し、小屋の扉を開けるとそこはおしゃれなカフェ。
コーヒーとケーキやワインを楽しむ異空間に「ここはどこ?」と少々びっくりしました。
宿泊者であることを伝えると、小屋の設備や食事時間等、簡単な説明を受けます。

登山靴はこちらの靴置き場へ。乾燥室にもなっているため、濡れた衣類等を乾かすことができます。

寝床は1階~2階まであり、通常の山小屋と同じような造り。1階は写真のような2段式になっており、さらに奥に行くと更衣室と洗面所があります。

私の寝床は2階でした。1階と異なり2段式ではないので、やや広く感じます。
布団は清潔で温かいですが、インナーシーツ必須。小屋での貸出・販売はありません。
宿泊棟にコンセントがないため、スマホの充電はカフェのコンセントを利用させていただきました。
トイレは宿泊棟の外。水洗式・和式・男性専用がそれぞれあります。少し薄暗いのでヘッドライトがある方がいいですね。

ぱんだ屋は宿泊者専用カフェ。スナックやソフトドリンク、ビールのほかに、マグやお皿、バンダナまで販売しています。
ビールもおしゃれ!コロナやカールスバーグ、ピルスナー・ウルケルまであります。山で海外ビールが飲めるなんて…。

カフェのメニューも充実!コーヒーやカプチーノ、エスプレッソ、ココア、チャイ、紅茶、ワイン、サングリア、ビール。
本日のケーキ(この日はアイシングケーキとチョコケーキ)、おしるこ、おでんなど。
また、やかんに入ったお湯・水(各200円)から水の補給ができます。

カフェの主役の薪ストーブ。このストーブのおかげで、小屋はあたたか。
このストーブでピザやアップルパイ、ケーキを焼いています。

素敵なラウンジまであるのは感激!!ガラス戸の前には摩利支天乗越に続く尾根が見えます。
本を読んだり、スマホを見たり、おしゃべりしたり…と、皆さんに思い思いに過ごしていました。


さて、こんな素敵な山小屋ですが、わたしはといえば、いつもの生を注文。キンキンに冷えたビールで喉を潤して、サイコー!!

標高は2,800mのため、外でゆっくりする際は薄手のダウンやフリース、雨具などを羽織っています。
夜にはストーブに火が入りました。

夕食は、豚肉の柚子胡椒添えとシチューがメインの栄養バランスのとれた献立。
山小屋でスペースが限られるため、他の方と相席になります。気づけば、山の話題に花が咲きますね!

食後には薪ストーブで焼いたピザがサービスされます!せっかくなので、サングリアと一緒にいただきました。
山小屋とは思えないおしゃれなひととき。

食後は星空を見たり、テラスでおしゃべりしたり…。私はさっさと就寝です。

翌朝は4:30頃から朝食の支度が始まり、食堂棟に明かりがつきました。朝型のわたしは早くに目が覚め、ラウンジでゆっくり。
朝ごはんは、焼きハラスや自家製味噌汁、紀州から取り寄せた梅干しなど。登山に向けてしっかりいただきました!
朝食後に、800円の追加料金で焼き立てのアップルパイをつけるサービスがあります。お腹がいっぱいだったので遠慮しましたが、こちらも大人気でした。